
平成19年下期「なら県民電子会議室」運用の結果について
平成20年9月12日
奈良県総務部知事公室広報広聴課
I 運用全般に関して
「なら県民電子会議室」は、インターネットを活用して県民同士が県政について幅広く議論できる場を提供することにより、県民の県政に関する理解と関心を高めることを目的として、 平成18年11月1日から運用を開始し、平成19年度で2年度目に入り、下期は平成19年10月5日から平成20年3月31日までの6ヶ月間実施しました。電子会議室の運用につい ては、平成18年度に引き続き19年度も、公募により選定している運営団体であるNPO法人電子自治体アドバイザークラブと県が協働の形態で実施しました。
平成19年度下期のテーマは、県政の主要施策等、県民の理解と関心の一層の高まりが求められているものとして、「ストップ温暖化を考える」、「世界に開かれた奈良づくり」、「みんな で教育について語ろう」の3つのテーマを選定しました。
登録・投稿・アクセスの結果は、次のとおりです。
期末登録者数 |
投稿件数 (1テーマ1月平均) |
アクセス件数(月平均) |
|
H19年度下期 | 162人 |
683件 (38件) |
22,356件 (3,726件) |
H19年度上期 | 127人 |
882件 (49件) |
22,702件 (3,784件) |
H18年度下期 | 66人 |
185件 (19件) |
11,078件 (2,216件) |
この県民電子会議室の運営について、運営団体からの報告書では、「電子会議室の特徴は、多様性を認め合うことであり、文化や経験の異なる人が、自由に対話することにより気付くことがある。電子会議室へのアクセス・投稿を増やす施策が必要であり、多様性を支える不断の革新が成功への鍵である」と指摘されており、6ヶ月に亘る議論について、「奈良をよくしたい、自分の住んでいる地域をよくしたい、と思った人たちが集まって議論した内容であり、県政や地域活動に生かしていただきたい」と、投稿者の声を踏まえて強く期待を寄せられているところです。
II 各会議室に関して
1 (テーマ1)「ストップ温暖化を考える ―家庭・地域から温暖化防止の取組を広げよう―」
1) 概要
この会議室は、「今まさに身近で深刻な問題となってきている地球温暖化について、奈良の現状把握から将来のあるべき姿、そして自らはどうすべきか、どうしたいかなどについて、気楽な気持ちで議論をスタートし、そして家庭や地域での様々な取組の報告や多くの意見・提案をいただいた」とまとめられています。6ヶ月間の投稿件数は174件(投稿者数25人)でした。
提案事項については、多様な発言の中から、はっきり内容が明記された提案や具体性のある提案を抽出し、大項目として6項目(小項目レベルで21項目)にとりまとめられています。発言の概略については、「地球温暖化の影響」、「ストップ温暖化への奈良県民意識」、「重点分野と対策について」、「実践の鍵は」など、5項目にとりまとめられています。これらの内容については報告書において詳しく記述されています。
議論を振り返って、報告書において、「6ヶ月を通しての課題は、一にも二にも参加登録者を増やし、より多様な議論を展開することであった。また女性層や若い層の参加があまり感じられなかった。少し専門的な内容もあり、また細かく長い或いは堅い投稿が多く、安易に入り辛いことなどが影響したかもしれないが、根本的にはわざわざ投稿参加する必要性やメリットが今一歩少ないことが要因と考えざるを得ない」、「投稿はしていないが会議室を見ている方は非常に多く、このような方を如何に投稿行動に結びつけるかの更なる工夫と、強い動機付けが必要である」と課題が指摘されています。また議論や会議室の意義について、「全般に内容は広範囲で、家庭から地域でのあらゆる分野に言及でき、はじめの議論としては奈良県の実状をある程度的確に捉まえた議論や提案ができたのではないかと思える」、「ストップ温暖化をはじめ多くの問題が山積する現代において、多様な意見をフランクに投げかけ議論し、県政へ提案できる場は貴重である」と指摘されています。
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた6項目の提案について、それらに関連する施策の現状、施策の方向性等について、別紙1にとりまとめています。
2(テーマ2)「世界に開かれた奈良づくり ―海外へ奈良の情報発信や外国人観光客の誘致など― 」
1) 概要
この会議室では、「奈良は日本の誇る古い歴史的文化遺産が沢山あり、観光資源としても十分な魅力を備えているにも拘わらず、海外では意外に知られていないのが現状です。奈良の魅力をもっと発掘し、海外に発信しなければなりません。これから半年間、色んな角度から奈良の魅力について語り合い、観光のみならず、多様な国際交流や国際協力のあり方についても議論していきたい」と呼びかけ、情報交換や議論が行われました。6ヶ月間の投稿件数は212件(投稿者数27人)でした。
提案事項については、発言内容が多様である中、提案とその他発言に分類し、具体的な内容にまで煮詰まっていない項目も今後継続して検討する価値があるものは提案項目に含め、3分野10項目にとりまとめられています。その他発言については、「魅力ある景観を残そう」、「観光客に対する親切な対応の大切さ」、「歴史的文化遺産の効果的訴求」の3分野にとりまとめられています。これら内容については報告書において詳しく記述されています。
議論を振り返って、報告書において、「6ヶ月に亘り、熱心に色んな角度から議論が行われたことは意義深かった。検討が不十分な項目や掘り下げの足りない項目多いことは否めないが、中には今後の検討課題として、具現化のための努力を続けるに値する項目も少なくない」と議論の意義が述べられています。議論のコーディネートについて、「6ヶ月という限られた期間で、極めて幅広いテーマの議論をリードしながら、意見を集約していくことは予想以上に難しかった」、「結果的に投稿者の数が期待したほど増えなかった」と、その難しさが指摘されています。
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた10項目の提案について、それらに関連する施策の現状、
施策の方向性等について、別紙2にとりまとめています。
3(テーマ3)「みんなで教育について語ろう ―子どもを育てるための家庭・学校・地域の協働―」
1) 概要
この会議室では、平成19年度上期からの継続テーマであることから、「議論運営上、『地域の取り組み紹介』『学校の取り組み紹介』『PTAの取り組み紹介』『学校と地域の協働』の4つのカテゴリー分けと、自由に教育について語れる『新たなアイデア』、議論を実践に結びつける機会とする『【特集】学校へ行こう』の設定にしたのが下期の特徴です。また、上期に議論された学校支援地域本部について、より具体的な議論ができるように意識的に取り上げた」とまとめられています。6ヶ月間の投稿件数は297件(投稿者数16人)でした。
提案事項については、4項目にとりまとめられています。発言の概略については、経過と論点として「地域の取組」、「学校の取組」、「PTAの取組」、「学校と地域の協働」など、5項目にとりまとめられています。これらの内容については報告書において詳しく記述されています。
議論の成果として、「学校支援地域本部設置がどのように進行しているかという情報をリアルタイムに提供できた」、「学校と地域が協働するための情報共有の仕組みが有効であることがわかった」、当電子会議室の議論が一つのきっかけとなって「地域のリソースを活用するための仕掛けとして、NPO法人奈良地域の学び推進機構が誕生した」の3点が挙げられています。また、課題として、「当電子会議室への参加者数を増加させるため実践校にレポート参加を要請する必要がある」、「学校現場やPTAからの意見を簡単に紹介できるようにする方法を検討する必要がある」、「学校評価や県内の学校での教育活動の的確な情報を発信できるように検討する必要がある」の3点が指摘されています。
議論の意義について、「平成20年度からは、学校支援地域本部を設置するという施策が打ち出され、県内では62箇所での運営をめざしているこの節目の時期に、当会議室での議論が、県民への公立学校の教育活動を考え合うという啓発の一環として位置づけられたことが意義あるもの」とまとめられています。
議論のコーディネートについて、議論が錯綜しないよう整理するための手法としてRVPDCAマネジメントサイクルを会議の進行に導入したこと、扱う話題を常に実践をもとにしたこと、全体の中での位置づけを閲覧者が常に把握できるように意見を仕分けしたことが報告されています。また、電子会議室への期待として、「この電子会議室の仕組みがより発展的に活用されることで、時代にあった地域における子育ての共同性を回復する道筋が見え、大人が力を合わせる教育コミュニティづくりの活動ノウハウを共有でき、学校を拠点にした地域の再生に一歩でも近づいていくことを願っている」とまとめられています。
※ RVPDCA:R(リサーチ)V(ビジョン)P(プラン)D(ドゥー)C(チェック)A(アクション)
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた4項目の提案について、それらに関連する施策の現状、施策の方向性等について、別紙3にとりまとめています。
III 運用の課題及び結果の活用に関して
1 全般総括、課題及び県への要望
運営団体の報告書において、平成19年度下期の運営全般を総括して、次のことが指摘されています。
・ 家庭から地域のあらゆる分野に言及でき、熱心に色んな角度から議論が行われ、奈良県の実状をある程度的確に捉まえた議論及び提案ができた。
・ トップページのアクセス件数が22,356件になり、多くの方々が閲覧していただいている。
・ 会議室の具体的テーマにして、地域活動を進めるNPOやグループが誕生するなど、提案にまとめるだけでなく、それを実践する行動につながっている。
・ 電子会議室は広く県民にメッセージを伝達し、議論して県民の意見を集約する有効な手段である。
また、運営団体から次のとおり具体的な課題が指摘されています。
1) 登録者及び投稿者、特に女性層や青年層の参加を増やし、より多様な議論を展開すること。そのためには投稿に参加する必要性やメリットを感じられる施策が必要である。
2) 投稿者数は登録者数の約半数であり、残りの登録者にも投稿していただける動機付けが必要である。また、会議室を閲覧している方も多いので、この方々を登録・投稿行動に結びつける工夫が必要である。
3) 教育のテーマに関して、学校現場やPTAからの意見が気軽に聞ける方法や情報交換ができる環境づくりが必要である。
4) 既存の団体や組織による情報の共有化及び協調体制づくり、地域住民による魅力ある街づくりと行政との協働体制といったテーマについて、議論がなされなかったのは心残りであった。
5) この会議室は県の事業でありながら、一般の者には県の考え方が分からない。県の方針なり考え方を明示して議論することがあってもいいのではないか。
また、運営団体から次のとおり県への要望が寄せられています。
1) 県職員の参加について
(1) 関係部署の業務に関係する投稿について、投稿者が既に実施中の事業などについて知らない場合、担当課から自主的に事業内容の紹介をしてほしい。
(2) 業務に関係のない職員も、私人として積極的な参加をお願いしたい。
(3) 県民同士が議論していることについて、事業内容が間違って伝えられているような場合、県から正してもらいたい。
(4) 知事自らのメッセージを顔写真ともに会議室のトップページに載せることはできないものか。そのことによって、投稿者の裾野を大きく広げることにもつながる。
2) 広報活動について
チラシ、ポスター、メールマガジン、サイトなどを利用して、広報に努めているが、知名度は低い。テーマに関する部署からも広報の支援をお願いしたい。
3) 県の施策への反映について
投稿者は、提案に対する県の取組について強い関心を持っている。その期待があるからこそ、投稿を続けている。電子会議室を継続させるためには、提案に対する県の前向きな取組姿勢が必要である。
なら県民電子会議室の運営については、運営を開始した平成18年度下期から今期も含め継続して、登録者数・投稿者数・投稿件数を増やすこと、女性層・青年層・県職員等の幅広い層の参加を図ることなどが課題として指摘されています。今期においては、登録者数や投稿件数が伸び悩み、固定化の傾向が出てきています。しかしながら、議論の内容は、今期においても広範囲で真摯な議論が展開されており、また、会議室にアクセスすることにより、その議論に多くの方々から関心を寄せていただいています。また、会議室の議論が一つのきっかけになりNPO法人が誕生したことが報告されていますが、議論から地域で自ら行動に移すという点で、協働事業の新たな面での成果です。
参加しやすく親しみのあるホームページづくりとして、平成20年度上期のスタートに際して、トップページ等のレイアウト一部変更やツリー表示での選択タイトルの表示明確化を行うとともに、新規登録時における必須項目の削減などの改善を行っています。
また、実効性のある議論が一層進むよう、関係部局への積極的な情報提供を働きかけています。
2 結果の活用等
また、結果の活用に関して、県においては、平成19年度下期の発言概要及び提案事項を関係する15課に通知し、住民ニーズ・行政課題の把握、実施している施策に対する評価、今後の施策の企画・運用等の参考に活用されるよう依頼するとともに、提案事項に関しては、IIで記載していますが、施策の現状、施策の方向性等をとりまとめていただいています。
この施策推進状況の中で、結果が施策推進に活用された特徴的な事例をとりあげ報告します。一つは、テーマ2「世界に開かれた奈良づくり」で提案されていた「奈良県庁のホームページ外国版の改善提案」について、担当課から、提案のあった具体の事項についても参考にしつつ、外国語版観光ホームページの全面改訂を進めていることが報告されています。電子会議室からの提案と県の事業推進がタイムリーに結びついた事例です。もう一つは、テーマ3「みんなで教育について語ろう」で提案されていた学校支援地域本部設置の取組推進について、フォーラム、養成講座、研修会等の開催の他に取組状況をホームページで公開することなども報告されています。これも電子会議室での地域レベルでの議論や提案と県の事業推進が同時進行し情報共有を促進している事例です。このような事例が、今後とも多く生まれるよう、結果の活用に努めていきます。
別紙1 テーマ1の提案に関する施策推進状況
別紙2 テーマ2の提案に関する施策推進状況
別紙3 テーマ3の提案に関する施策推進状況