
平成19年度上期「なら県民電子会議室」運用の結果について
平成20年2月28日
奈良県総務部知事公室広報広聴課
I 運用全般に関して
「なら県民電子会議室」は、インターネットを活用して県民同士が県政について幅広く議論できる場を提供することにより、県民の県政に関する理解と関心を高めることを目的として、平成18年11月1日から運用を開始し、平成19年度で2年度目に入り、上期は4月13日 から9月30日までの6ヶ月間実施しました。電子会議室の運用については、平成18年度に引き続き、公募により選定している運営団体であるNPO法人電子自治体アドバイザークラブと県が協働の形態で実施しました。
平成19年度上期のテーマは、県政の主要施策等、県民の理解と関心の一層の高まりが求められているものとして、「自分たちでできるまちづくり」、「みんなで教育について語ろう」、「奈 良県の観光戦略について考えよう」の3つのテーマを選定しました。平成18年度下期が2テ ーマでありましたので、1テーマ増えています。
6ヶ月間の登録・投稿・アクセスの結果は、平成18年度下期との比較では着実に進展しました。登録者数は、平成18年度期末66人に対し、平成19年度上期(9月)末127人で、61人(92%)の増加でした。投稿件数は、平成18年度下期185件(平均19件/月・ テーマ)に対し、平成19年度上期882件(平均49件/月・テーマ)で、1テーマあたりの1ヶ月平均で比較すると30件(158%)の増加でした。トップページへのアクセス件数 は、平成18年度下期11,058件(平均2,211件/月)に対し、平成19年度上期22,692件(平均3,782/月)で、1ヶ月平均で比較すると1,571件(71%)の 増加でした。
議論の中身については、運営団体からの報告書で述べられているとおり、「投稿内容は濃い充実したもので、専門知識や情報をもった実務に明るい議論が多い」ものでした。また、運営団体からは、投稿者の声を代表して「奈良をよくしたい、自分の住んでいる地域をよくしたい、と思った人たちが集まって議論した内容であり、県政に生かしていただきたい」と、強く期待を寄せられているところです。
II 各会議室に関して
1 (テーマ1)「自分たちでできるまちづくり ―地域住民主体による魅力あるまちづくりの提案―」
1) 概要
この会議室では、「自分たちでできるまちづくりをテーマに、まちづくり、地域づくり、まち・村おこしなどについて、様々な事例の紹介や意見、希望などを投稿下さい。住民によるいろんなまちづくり活動の輪を広げていくきっかけになればいいと思う」と呼びかけ、情報交換や議論が行われました。6ヶ月間の投稿件数は124件でした。
議論の内容については、実際の事例なども報告もされ、幅広く議論されました。発言の概略については、「ボランティアのまちづくり参加」、「まちづくりの情報」など、8項目にとりまとめられています。発言内容については報告書において詳しく記述されています。また、提案は5項目にとりまとめられています。
議論を振り返って、報告書において、「直接まちづくり活動を行っている方や若者の参加が比較的少なかったことは、残念なこと」、「投稿に際し分類項目等を設けずにスタートしたため、投稿をし難くしたのではないか」、「人によって『まちづくり』そのもののとらえ方が多様であり、さらに議論の基礎となる『自分たちでできるまちづくり』そのものの内容も多種多様であることを改めて考え直す機会となった」と、課題や意義がとりまとめられています。
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた5項目の提案について、それらに関連する施策の現状、施策の方向性等について、別紙1にとりまとめています。
2(テーマ2)「みんなで教育について語ろう―子どもたちの学び舎、学校づくりを地域ぐるみで考えよう―」
1) 概要
この会議室では、「『おらがまちの学校』自慢と『元気な学校』づくりの方法や地域ぐるみで子どもを育てる技、などを話し合っていきたい。大分類は、『理念』、『現状把握』、『求める姿』、『方法論』とし、分類に合わせて投稿下さい」と議論の方向性が示され、また、情報やデータの提供により考える材料が多くなるよう工夫され、情報交換や議論が行われました。6ヶ月間の投稿件数は360件でした。
議論の内容については、教育現場等で取り組まれている具体の先進事例や政府の概算要求で盛り込まれた学校支援地域本部の設置についての最新の動きなどを踏まえて、具体的で深い議論が行われました。発言の概略については、理念―現状把握―求める姿―方法論に沿って、「学校って何だろう」、「学校あるある大事典」、「こんな学校ならいいなあ」、「地域で子どもを育てる実践」の4項目及び「成果」、「課題」に取りまとめられています。
発言内容については報告書において詳しく記述されています。
成果としては、「学校は学びの場であり、全ての営みが学習につながるものであるという前提が確認できた」、「学校と地域が協働するためには、コーディネートする仕組みが必要である」、「総合的な学習やキャリア教育の分野で特に地域のリソースを活用する仕掛けが必要になる」と指摘されています。課題については、「会議室への全体の参加者数を増加させる必要がある」、「学校現場からの意見を紹介できるようにする方法を検討する必要がある」、「県内の学校での教育活動の的確な情報を発信できるようにする方法を検討する必要がある」と指摘されています。また、提案は4項目にとりまとめられています。
議論の意義について、「『地域ぐるみで学校をつくる』というテーマ設定は、公立学校改革の大きなトレンドになっている。県内北部の小中一貫校の取組で、成果が上げている理由の一つに、地域ぐるみで学校を支援する取組があることが指摘されている。そのような状況で、電子会議室の議論が、県民への学校教育活動への関心を喚起し、地域をあげて公教育を後押ししていくための啓発の一環として位置づけることは意義あるものだ」とまとめられています。
議論のコーディネートについて、「議論の整理のための手法として、RVPDCAマネジメントサイクルを導入した。また扱う話題を常に実践を基にした。意見について、全体の中での位置づけを把握できるように仕分けを行った」と要点が報告されています。
また、電子会議室の運営について、「全体として電子会議室への書き込み参加者の広がりがは見えず、不特定多数の県民を対象にした電子会議室の会議運営の難しさが際だった」とも報告されています。しかしながら、電子会議室への期待として、「この電子会議室の仕組みがより発展的に活用されることにより、時代にあった地域における子育ての共同性を回復する道筋が見え、子どもを地域で育てるために大人が力を合わせる教育コミュニティづくりによる地域の再生に一歩でも近づいていくことを願っている」とまとめられています。
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた4項目の提案について、それらに関連する施策の現状、施策の方向性等について、別紙2にとりまとめています。
3(テーマ3)「奈良県の観光戦略について考えよう」
1) 概要
この会議室では、低迷する「この奈良の観光を、何とかしようではありませんか。2010年を目前に控え、観光ルートづくり、宿泊の魅力発掘、情報発信の工夫など、意見・アイデアをどんどんお寄せ下さい」と呼びかけ、情報交換や議論が行われました。6ヶ月間の投稿件数は398件でした。
議論の内容については、実例の報告やアイデアの提案も多く、具体的で幅広い議論が行われました。発言の概略については、「泊まらなければ見られない魅力の発信」、「奈良観光のモデルコース」、「平城宮跡の復原」、「ランドオペレーター構想」など、19項目に取りまとめられています。発言内容については報告書において詳しく記述されています。また、提案は15項目にとりまとめられています。
議論を振り返って、報告書において、「議論が深まり、地に足のついた意見交換が行われた」、「県にとっては耳の痛い意見も多いと思うが、背後には投稿者の愛郷心・奈良を愛する心が感じられるものばかりである」、「これらの提案を無駄にすることなく、十分検討し、県の施策に反映していただきたい」とまとめられています。
まとめの仕方について、「3ヶ月目で一旦区切りを設ける方が、まとめやすく、読んでいただきやすいと思う」と指摘されており、また事前登録及びコーディネーターによるチェックについて、「二重チェック体制の見直しも下期の検討課題であると思う」と指摘されています。
会議室の運営について、「引き続き会議室の県民への周知に努めるとともに、会議室運営委員、県の担当部署職員、観光や文化に携わっておられる外部の専門家にも閲覧・投稿をお勧めし、実りある議論ができるような素地を作り上げることが重要である」と今後の課題が指摘されています。
2) 提案に関する施策の推進状況
報告書において取り上げられた15項目の提案について、それらに関連する施策の現状、施策の方向性等について、別紙3に取りまとめています。
III 運用の課題及び結果の活用に関して
1 課題及び県への要望
平成19年度上期の運営を総括して、運営団体から次のとおり具体的な課題が指摘されています。
1) アクセス数を増やす施策、登録者数を増やす施策が必要である。
(1) 投稿率を上げる
登録者数127人に対し実際に投稿した投稿者数66人の割合(投稿率)は52%であること、投稿の多い上位10人の投稿数の割合が全体の76%であること、18年度に投稿した26人の内19年度上期にも投稿したした人13人の割合が50%であり、登録はしたが投稿にいたっていない人に対する働きかけが必要。
(2) 広報活動を強化して、全体の分母(アクセス数、登録者数、投稿数)を上げる
全体の分母(アクセス数、登録者数、投稿数)を上げるために、広報活動(電子媒体、紙媒体)、関係団体(NPO等)への働きかけ、相互のサイトへのリンク接続、組織的なPR活動(目標設定)の強化が必要。
(3) 運営方法の研究を進める
投稿しやすい仕組み、ルール(登録、事前チェック等)、最大公約数意見の反映などの運営方法について一層の研究が必要。
2) 運営体制の強化が必要である。
(1) テーマに関する分野からの参加や影響力のある人の参加が必要
(2) 運営委員会の役割や議論の結果のフォローが必要
(3) 会議室を盛り上げ、活性化するための啓発活動が必要
また、運営団体から次のとおり県への要望が寄せられています。
1) 県職員の参加について
(1) 関係部署の業務に関係する投稿について、投稿者が既に実施中の事業などについて知らない場合、担当課から自主的に事業内容の紹介をしてほしい。
(2) 業務に関係のない職員も、私人として積極的な参加をお願いしたい。
(3) 県民同士が議論していることについて、事業内容が間違って伝えられているような場合、県から正してもらうことが望まれる。
2) 広報活動について
チラシ、ポスター、メールマガジン、サイトなどを利用して、広報に努めているが、テーマに関する部署からも広報の支援をお願いしたい。
3) 県の施策への反映について
投稿者は、提案に対する県の取組について強い関心を持っている。その期待があるからこそ、投稿を続けている。提案に対する県の前向きな取組姿勢が必要である。
既に18年度下期の運営の課題として、投稿者・投稿件数やアクセス件数を増やすこと、幅広い層の参加や議論を深められる工夫などが必要と指摘されています。平成19年度上期の投稿件数・アクセス件数等については、前期との比較では着実に進展したところですが、運営団体からの上記の指摘にあるように、前期からの課題に加えて、投稿者の拡大、運営方法の研究、県職員や関係部局の積極的な参加・支援が必要です。参加しやすく親しみのあるホームページづくりとして、投稿に際して画像が添付できるようにするなどの改善も実施していますが、さらに登録時における必須項目の見直しなども行ってまいります。また、関係部局への積極的な情報提供を働きかけるなど、実効性のある議論が一層進むように努めてまいります。
2 結果の活用等
また、結果の活用に関して、県においては、平成19年度上期の運用結果の詳細を関係する30課に通知し、住民ニーズ・行政課題の把握、実施している施策に対する評価、今後の施策の企画・運用等の参考に活用されるよう依頼しました。なお、特に提案事項に関しては、IIで記載していますが、IVで記載している平成18年度下期の提案に関すものも含め、施策の現状、施策の方向性等について、平成20年度当初予算案も踏まえて、関係課で取りまとめていただくなど、県行政と県民とのコミュニケーションの向上につながるように結果の活用に努めているところです。
IV 平成18年度下期の提案に関する施策の推進状況
平成18年11月〜平成19年3月に実施した会議室のテーマ1「奈良の魅力の大発見」について、提案に関する平成20年2月現在の施策推進状況を追加したものを、別紙4に取りまとめています。テーマ2「みんなで取り組む防災対策」については追加はありませんでした。
別紙1 テーマ1の提案に関する施策推進状況
別紙2 テーマ2の提案に関する施策推進状況
別紙3 テーマ3の提案に関する施策推進状況
別紙4 平成18年度下期テーマ1の提案に関する施策推進状況(平成20年2月28日現在)